◇添わす&沿わすダンス

腹が痛くともダンスはできる…そうは言っても、実際に外へでてダンスをする勇気はなかなか湧いてこないものだ。
いつその時がくるものかと待ちわびていたが、昨日、久々に千代崎ダンス倶楽部へ行けた!
腹をかばう動きにはなるが、寝転んで体側を使う動きはできる。
ちょっと安心した。
今の自分の身体では、ひとりでここまではできない。
動かすこと自体怖い、という感覚が優先してしまう。
当然の防衛本能であろう。
集中した密な時間をありがとう。
人の力ってすごい。
ありがたい。
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きょうのメモメモ
<カラダを添わす>
添わすもの、それが周りの音であっても、肌に触れる感触であっても、実際に空間に存在するものであってもよい。
空っぽになって、向こうからやってくるのを待とう。
動かされ、時には自分から動いてみる。
相反する意識のベクトルの間を行ったり来たり。出たり入ったり。
何かをなぞる<動きを聴く
自分から触角を伸ばしていくよりも入ってくる動きの方が強いのかもしれない。
3人ずつ2チームに分かれての即興の動き、集中した時が流れていた。
ソロが3つ存在するが、互いに不思議な関係性が存在する。
シンクロした動きが起こり、その瞬間、空間がぴっと浮き立つ。
いつまでもいつまでも動いていたかった。
いつまでもいつまでも見ていたかった。

◇極太みみず その後 ~入院体験記その4~

極太みみずとのデュオはなかなかうまくいかない。
自由奔放なこいつは、気まぐれに不意を狙って大きく動く。
私は為す術もない。
じっとうずくまって耐えるだけである。
こいつの動きを何度か腹で受けていると
同じ動きでも微細な差があることがわかってきた。
にょろにょろっ      ※ラストの「ろっ」は強くカットアウト
にゅるにゅるにゅる    ※フェードアウトしていく動き
にゅわにゅわにゅわにゅわ ※短い距離を振り幅少なくゆっくりと進む
するするするする     ※速い、速い、にわかに駆け抜ける
術後一日、二日、三日、四日…
だんだんと動きが小さくなってきた。
にょろにょろっ が にょろ
にゅるにゅるにゅる が にゅる
にゅわにゅわにゅわにゅわ が にゅわ
するするするする が する
どうどうどう
よしよしよし
静まっておくれ、そうそう、君はいい子だ。
さすりさすり
ぶつぶつ言いながら
なだめてみる。
赤みがかったピンク色の盛り上がった肉が
少しづつ生気を失い、乾いてくる。
そして、ひと月と半分。
1㎝×10㎝ほどの半分生きている百足になった。
百足が靴を履いて出掛けるには時間がかかり過ぎる。
だが、百足の虫は死して倒れず。
乾いた動きに変化しつつ
時に、にゅるにゅると
歩いていこう。
これからは
百足とのデュオ。

◇お食い初め ~入院体験記その3~

一縷の光明を見いだした。
ガスの翌日はとうとうお食い初めの日。
くん、くくん
ペロペロ
ぴちゃぴちゃぴちゃ
くくくん、くん
ぺちょぺちょ、ぺちょぺちょ
腹から胸、気管支を通って鼻へ通じる道を行ったり来たり。
舌と上顎が何度も何度も出逢う。
自分の手元まで舐めてしまいそう。
私は前世、猫だったのかもしれない。
形はないがよくわかる。
これは南瓜のポタージュ、これは人参のすり潰したもの、これは魚、これはたぶん豆類
ふふふふふ
思わず笑みがこぼれた。
食べることと笑うことが生きているということ。
よくわかった、
にゃーお。

◇ガス恋し ~入院体験記その2~

「ガスは出ましたか?」
術後、何度も何度も聞かれた。
ガスが来ないと何事も始まらないらしい。
ガスが来ないと絶飲絶食の呪縛から逃れられない。
あぁ、ガス恋し…恋しやガス
屁みたいなもん
お風呂ではただの泡
普通の生活では取るに足らないものとされているが
待っていると恋人よりも愛しい存在になる。
しかも、出そうと思っても出るもんではない。
ごくごく自然にやって来るまで待つしかない。
ガス待ちの日々。
1日が経ち
2日が経つ。
私の人生はガスがやって来るのをただただ待つためにある、
そんな気がしてきた。
そして、3日目の気だるい午後。
そいつは予告もなく、とても控えめに音もなくやって来た。
すうっーー
身体の芯に、か細いけれど一本の通り道ができたようだ。
「えっ、今のそうやった?」
いや、確かに、そうだ。人に聞いてもわからない。
弱々しいものだが、こいつの威力はすごい。
痛くて単調な入院生活を潤いのある生き生きとしたものに変える風穴であった。
飲み物がOKとなり、オレンジジュースを飲ませてもらった。
うまい!
「すがすがしいし ガスガス」
(回文:上から読んでも下から読んでもいっしょ)
やったーーー!

◇極太みみずが腹を這う ~入院体験記その1~

生きのよい極太みみずがお腹の中を這い回った。
幅5㎝はあると思う。
それほど長いものではない。
おそらく15㎝以内であろう。
残念ながら、このみみずは私の視界には映っていない。
大きさは我が身の体感からくる想像上のもの。
なかなか手強い。
こいつが動き回る度に激痛が走る。
こんな奴を腹に宿した経験はなかった。
2回のお産でこんな奴はおらんかった。
にゅるっ。
地平線と平行に
時に斜め15度に
伸びやかで見事な動きをする。
おい、おまえ、いいダンスをするじゃないか。
おまえがそのつもりなら、こっちだって考えがある。
おまえとシンクロしてデュオをしてやろうじゃないか。
こいつはなかなか予測不可能な動きをする。
うずくまる。
うずまっても足首は動く。
ポキポキポキ。
骨の音が心地いい。
おい、聞こえるか?
聞こえているのなら、共鳴しておくれ。
夜を明かして
踊ろう、私と。
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止むに止まれぬ事情があって、入院、手術をすることとなった。
不幸と思うか、千載一遇と捉えるかは己の心次第である。
避けられないことであれば、これを楽しむしか道はあるまい。
生身の身体感覚を味わい尽くす日々の始まり。